介護職は医療の専門家ではありません。しかし介護の現場で時間的かつ物理的に、最も高齢者と接点があるのは介護職。身体の異常を少しでも素早くキャッチできる立場にあります。したがって介護職には、あらかじめ必要最低限の医療知識を習得しておくことが求められます。その1つがバイタルサインの知識です。人間は生きている以上、体温や脈拍あるいは呼吸など、様々な形で生命の活動を知ることができます。もし身体に少しでも異変が起これば、このような生命活動に症状として現れます。これがバイタルサインです。
例えばウイルスなどに感染すれば、体温が急速に上昇して高熱になることは、その典型です。もちろん食事の摂取や室温の変化あるいは入浴や興奮等によっても、体温は大きく変化することがあります。また脈拍の場合には心不全や脳障害が起こると、頻脈や徐脈さらに不整脈などの形で、異常な波動となって現れます。呼吸においても、肺の疾患や薬の副作用等の原因によって、頻呼吸や無呼吸あるいは喘鳴などの症状が出ます。
介護の現場ではこのようなバイタルサインを見逃さないためにも、高齢者の健康状態を毎日測定しているケースがほとんどです。体温の測定には、脇の下をはじめ口腔内や直腸など、様々な部位で測定する方法があります。なお脇の下で測定するのが一般的です。また脈拍測定では、橈骨静脈や上腕動脈あるいは総頸動脈や大腿動脈といった、最も脈拍が触れやすい部位で測定します。ちなみに通常は橈骨静脈で測定します。呼吸の測定は目視が一般的ですが、高齢者に気付かれないようにするのがポイント。高齢者が意識すると呼吸の速さやリズムが変化してしまうからです。